協同インターナショナルは、何の会社?
「協同インターナショナルは、何の会社ですか?」と質問する方も多いと思います。
普通なら、IT会社、食品の会社と一言でいえますが、私達の会社は、電子MEMS※1、IoT※2技術・製品、ライフサイエンス研究のための機材や試薬製造、ヨーロッパの最高級生ハムなどの食品食材、酪農・畜産、バイオマスなどの環境関連まで、さまざまなジャンルを扱っています。
ちょっと不思議かもしれませんが、私達にとっては不思議ではありません。業種にこだわらず、「今までなかったモノ」「真似されないモノ」「自分で価値が付けられるモノ」の製造や販売を通して、お客様の課題の解決やメリットを提供することが、1970年の創立以来の企業理念です。業種、業態、国境の壁を越えて、お客様の課題を解決するオンリーワンの製品を開発する「提案型企業」をめざしています。
2018年には、経済産業省により神奈川県の「地域未来牽引企業※3」に選定されました。神奈川県の地域経済の中心的な担い手として、地域に貢献する企業活動も行っています。
- ※1 電子MEMS:MEMSは微小電子機械システムMicro Electro Mechanical Systemsの略。半導体集積回路の技術を応用して、数㎜四方の微小なチップに電子回路やセンサなどを作り込んだ部品のこと。自動車やスマートフォンで利用されている。
- ※2 IoT:Internet of Thingsの略。いままでインターネットにつながっていなかったさまざまな物を、インターネットを介してつなぐ技術。代表的な利用例に、自動運転車、スマートホーム、IoT家電などがある。
- ※3 地域未来牽引企業:経済産業省が実施する地域中核企業の創出・支援に向けた政策のひとつで、今後の地域経済を牽引することが期待される企業を「地域未来牽引企業」として選定するもの。
→METI Journal ONLINE「【地域未来牽引企業】高級食材から最先端デバイスまで」
バイオミメティクスは、生物の真似をするテクノロジー
バイオミメティクス(Biomimetics)という言葉を聞いたことはありますか? 日本語では「生物模倣技術」と呼びます。バイオミメティクスは、生物の機能や構造を観察・分析して、そこから新しい技術やモノづくりに応用する科学技術のことです。いわば、自然界に存在する生きもののよい部分(形状や性質)を真似して、技術として活用するのです。
たとえばハスの葉の撥水性※4は、水や汚れをはじくため、屋根の材料や塗料などに用いられています。皆さんが食べるヨーグルト製品に使われているアルミニウムの蓋も、ハスの葉にヒントを得て開発された包装材です。だから内蓋にヨーグルトが付きません。
また、サメの皮膚をヒントに開発された新素材のハイテク水着を着用した選手達が、水泳競技の記録を大幅に上げたことがあります。これは、サメの皮膚が小さな突起に覆われていて、水の抵抗を少なくして泳げることから発想されたものです。
こうして私達は、生物の特徴を模倣して社会に役立つ新技術を作り出しています。
- ※4 撥水性:水をはじく性質のこと。
髪の毛の直径よりもはるかに小さい微小な世界—ナノインプリント
当社の電子MEMS事業のうちのひとつ、ナノインプリントのお話をしましょう。たとえばカメレオンの体の色が変わるのは、構造発色※5といいます。カメレオンの細胞のように色の粒の構造を持たせて、その大きさや組み合わせを変えると、そのもの自体には色が付いていなくても光や熱があたると、さまざまな色を発することができます。
カメレオンの色変化の原理を模倣するには、ミクロンよりもっと微小なナノメートルの大きさの世界でその構造の型を作り、ハンコを押すように構造をプリントすれば、カメレオンの体の色の構造を人工的に再現できます。
- ※5 構造発色:物質そのものには色がないのに、光を受けて特定の波長だけが反射・強調されて、発色する現象。生物ではカメレオンや玉虫など、身近なものではコンパクトディスクやシャボン玉などがある。
ナノインプリントは、ナノレベル(1ナノメートルは10億分の1メートル)で、凹凸のある型を作って押しつけ、半導体やフィルムなどを作ることができます。髪の毛1本の直径よりもはるかに微小な世界で、さまざまな構造や回路を描いた型から、いくつもの転写スタンプを作っていると考えてもらえばよいでしょうか。これは当社が1975年から電子事業を開始した半導体製造技術を持っていたからこそ、ナノインプリントに応用することができたものです。プラスティックやフィルムにナノレベルのパターンを転写できる企業は、少なく、世界でも10社程度です。ナノインプリントのメリットは、低コストで開発期間が短く済み、少量からでもできるという点です。
コンピュータの半導体メモリや、ARグラス、自動運転自動車のセンサーレンズなど、さまざまな分野で、ナノインプリント技術が活用されており、これからの社会を支える技術として期待されています。
多様性がイノベーション(技術革新)を生み出す
協同インターナショナルは、先代の私の父が商社として創業した会社です。日本における半導体開発の黎明期に、薄膜材料スパッタリングターゲット※6を輸入したことがきっかけで、自社で半導体の製造加工業がスタートしました。大企業のお客様が半導体を欲していたというニーズと合致したのですね。当時の半導体は、まさに「今までなかったモノ」だったのです。
その後、半導体の技術を活かして、ナノインプリントを手がけていきますが、これもまた「真似されないモノ」「自分で価値が付けられるモノ」です。
- ※6 薄膜材料スパッタリングターゲット:半導体、液晶パネル、センサー、太陽電池などの電子部品を覆う薄膜を形成する材料のこと。
私は文系出身で、思いついたアイデアをすぐ社員にぶつけます。アイデアを受け止めてくれる当社の社員は、前職は塾やギターの先生など、バックグラウンドもさまざまです。ゴリゴリの理系だけの会社ではなく、文系・理系関係なく多様性がある会社だからこそ、イノベーション(技術革新)を生み出せるのだと信じています。お客様に、世界に名だたるIT企業や大学の研究者の方々がいらっしゃるのも、当社には彼らにない発想力や魅力があるからだと思います。
生ハムのフィルムにもナノインプリントの技術が使えれば!
当社には電子MEMSと食品食材というまったく異なる業種がありますが、実は社内の異業種コラボにも取り組んでいます。生ハムスライスの仕切りフィルムにナノベースの凸凹をつければ、さらにはがしやすいのではないかと考えたのですが、残念ながらこれはコストの問題で実用化には至りませんでした。私も自宅で生ハムを食べながら、なんとかコラボする方法はないものかと模索中です。
実は半導体の薄膜技術は、たとえばポテトチップスの袋の内側のアルミ部分、紫外線を遮るためのビール瓶の茶色や緑の着色にも使われています。身近な生活の中にも、電子製品の技術が応用されているのです。皆さんも自分の家にあるものを見て、これってどういう技術なんだろう、もっとよくするためには何が必要なんだろうと考えてみてください。「今までなかったモノ」「真似されないモノ」「自分で価値が付けられるモノ」のアイデアが生まれてくるかもしれません。
地域牽引企業として、川崎の名産品「かわさきハーブソーセージ」を開発
さきほど「地域未来牽引企業」として選定されたというお話をしました。当社は、かわさき新産業創造センター内のAIRBICにも拠点を持ち、川崎市内の企業同士で情報交換し、半導体ベンチャーが必要とする電子部材や機器の試作を、高付加価値・少量生産・タイムリーな納期で行って、ものづくりの後押しをしています。
また「川崎でしか食べられない名産品を作ろう!」という川崎市様からの呼びかけで、「かわさきハーブソーセージ」の開発・製造プロジェクトに参加しました。
当社の生ハムの加工技術を活用したソーセージ製造を「協同インターナショナル」(宮前区)、ハーブ生産を障がい者福祉農園「はぐるまハーブ園」(麻生区)、デザインをデザイン会社「モノプロ工芸」(宮前区)、 企画・販売を飲食店「すずや」(中原区)という川崎市内の異なる職種の人たちがタッグを組んで試行錯誤しながら作った、オール川崎のオリジナル商品です。地域の未来は、こうしたことからも生まれてきます。「かわさきハーブソーセージ」を見かけたら、川崎市のみんなで作ったんだなと思って食べてみてください。食べた感想をもらえると嬉しいです。
動画インタビュー 共感を得る!一人よがりにならないアイデアを
インタビュー動画では、社会課題解決型の企業姿勢、まわりの共感を得ることの大切さについて語っていただきました。人と違っていてもいい、まわりに理解されなくてもいい、ユニークな個性を発揮して、あきらめずにがんばってほしいという応援メッセージもあります。