60年以上、写真と映像に関する製品だけを作り続けている会社
シグマは、デジタルカメラ、交換レンズ(スチル/シネマ)、各種アクセサリーの製造・販売を行うメーカーです。1961年の創業以来、写真と映像に関する製品、つまり撮影に関する道具だけを60年以上作り続けています。現在は神奈川県川崎市麻生区に新本社を置き、会津に生産工場を保有し、国内一貫生産にこだわっています。
新本社の場所は、数年かけて選定しました。川崎市麻生区のマイコンシティ栗木地区を選んだ理由は、東京近郊にありながらこれだけ緑豊かな職場環境を得られ、職住接近が実現しやすいロケーションという点でした。
また、創造発信都市として整備された川崎市マイコンシティ※1区画内に本社を置くことで、川崎市内でユニークな取り組みを行っているスタートアップ企業から大企業に至るまでのさまざまな企業・研究機関と交流し、将来的にオープンイノベーション※2の創出を期待しています。
ちなみに本社の来客用会議室には、光学に関連した偉人たち、数学者のガウスや映画を発明したリュミエール兄弟などの名前が付いた会議室があります。
- ※1 川崎市マイコンシティ(かわさきマイコンシティ):神奈川県川崎市麻生区に整備されたエリア。エレクトロニクス関連産業をはじめ、通信・情報処理・ソフトウエア業などの研究開発機能などを集積し、創造発信都市として新しい産業基盤と雇用の創出を図る。
- ※2 オープンイノベーション:会社や組織の改革や刷新を行うために、組織の内外を問わずさまざまな知見や技術を取り入れて、新しい価値を生みだそうという考え方。
Made in Japanへのこだわり
シグマの製品は、約8割強が海外での販売、2割弱が国内販売というグローバルな会社です。ただし製造は、ほぼ100%が国内自社生産。国内では一切製造していないという日本のメーカーがほとんどの中で、シグマだけは国内生産にこだわり続けています。
メイド・イン・ジャパンにこだわる理由には、2つあります。やはりレンズというのは、製造するのがすごく難しい。レンズ作りはアナログ的な技術で、精度の高いレンズを磨き上げるためには、これまで積み重ねてきたノウハウや技術がとても重要になります。シグマ唯一の生産拠点である会津工場には、その人材とノウハウのすべてが備わっています。
高精度の光学レンズ製造
レンズに関しては、光学設計の担当者がソフトウェアを使ってシミュレーションを繰り返して、レンズの枚数・形状・材質などを設計します。さまざまな種類の屈折率の異なる光学ガラスを、どう組み合わせれば美しい画像が撮れるのかというシミュレーションですね。レンズですからピントを合わせるために、20数枚あるレンズの光軸をピシッと中心に合わせる非常に高精度な設計となります。
よく視力検査で検眼鏡をかけて視力を合わせるために、複数のレンズを入れ替えて試して最適な度数を測りますよね。カメラのレンズの構造としては、あれに近いと思っていただければわかりやすいかもしれません。
レンズを通した画像のゆがみ、ぼけ、色にじみを「収差」と言います。「収差」が出る度に、それを補正するために1枚ずつレンズを追加していきます。たくさんレンズを入れるほど、高精度になりますが、そうすると出来上がったレンズ自体が非常に重くなってしまう。物理的に限界がありますので、いかにコンパクトで軽量でありながら高精度の性能を実現するかのせめぎあいで、設計がなされていきます。
ハリウッドが認めた!シグマの映画用シネレンズ
シグマが、映画用レンズ(シネレンズ)の開発・製造を始めたのは2016年からです。2013年に写真用交換レンズとして発表した、世界初※3のF1.8通しのズームレンズ「18-35mm F1.8 DC HSM | Art」が、米国で突出して高い売れ行きとなりました。「なぜ米国で人気なのか?」と調べてみると、映像関係者が映像用としてこのレンズを評価してくださっていたのがわかりました。実は以前から、シグマの写真用交換レンズを映像用にカスタマイズして使ってくださっている映画業界の方が多いという話は伺っていましたが、これには驚きました。
シグマのシネレンズは、トム・クルーズ主演で近年大ヒットした映画『トップガン マーヴェリック』の撮影にも採用していただきました。映画ではコックピット内の撮影以外の多くのシーンでシグマのシネレンズが使われており、私達のレンズがハリウッドの厳しい評価の下で選ばれたことに胸が熱くなりました。しかも撮影で使われたシネレンズの光学系ガラスは、すべて写真用として発売されているArtシリーズ単焦点レンズと全く同じものなのです。ものづくりにこだわり、良いものを作り続けていれば、正当に評価されるものだという思いを新たにしました。
- ※3 デジタル一眼レフカメラ用交換レンズにおいて(2013年4月時点)。
ひとりひとりが「最高の仕事」のできる会社
シグマには、3つのテーマがあります。
①他社にはないものを作ること
当社は、市場調査などのマーケットリサーチを行いません。社員が作りたいものを考えて提案します。創業者の父の代から、他社にはない、良い意味で変なレンズをたくさん作ってきました。そこがカメラ愛好家の方々に評価されてきた結果につながっています。
最近のレンズ交換式デジタルカメラ「fp」も、私がスケッチしたアイデアを見たエンジニアが「こんなカメラがあったら欲しいです」と同意してくれて開発に至り、まさに「好き」をカタチにしたプロダクトとなりました。他社にはないものづくりは、常にシグマのテーマです。
②“Small office, Big factory”
創業以来“Small office, Big factory”という事業哲学を掲げています。管理部分のオフィスは小さくていいので、工場と技術力に最大限の投資をかけています。今後も極力そうしたいと思っています。「こんなレンズを作りたい」という開発主導のアイデアから、それを実現する生産技術を兼ね備えていることが、シグマの魅力だと思います。
③グローバル戦略
シグマが60年以上続いてきた理由のひとつでもありますが、当初から海外の販路を切り拓いてまいりました。現在、アメリカ・ドイツ・フランス・ベネルクス・香港・ UK・中国・ノルディックに子会社を持ち、海外代理店は約70ヶ国(2021年8月現在)あります。常にグローバルな視点でものづくりを行っています。
「ハッピー・モーメント・カンパニー」をめざして
当社は、経営ビジョンとして「ハッピー・モーメント・カンパニー」を掲げています。写真や映像は、誕生日や結婚、入学・卒業のお祝いなど、人々の幸せな場面に使われることが多い。シグマは人々の幸せな場面で活躍できる良い製品を作って、幸せに寄り添う会社になりたいと考えています。それには、企画、開発、技術のすべてを担う社員ひとりひとりが「最高の仕事」ができる会社としての環境を提供していくことが大切です。
医療技術の自動化など、未来への貢献も視野に入れて
将来については、光学メーカーとしてますますさまざまな可能性を切り拓いていきたいですね。また、写真や映像以外の分野で貢献できる可能性も探っていければと考えています。まだ漠然としていますが、たとえば医療技術の自動化といった最先端技術など、企業として人類の発展に貢献できることがあればぜひ模索していきたいです。
動画インタビュー
空想好きな子ども時代から”Think out of the box”へ
空想好きな子ども時代の思い出、既成概念という箱の外へ飛び出して発想する”Think out of the box”という考え方、世の中にないものを作る大切さについて、山木社長が動画で語っています。